心臓病(心臓外科手術)について
心臓病は、がんに次いで二番目に死亡者の多い病気です。心臓病は、大きく狭心症・心筋梗塞といった虚血性心疾患と、不整脈、弁膜症、心筋症、先天性心疾患などに分類されます。
狭心症は、心臓の冠動脈という血管が、狭くなったり詰まったりすることで、先端の血管の血流が少なくなり、一時的に息苦しい、胸が締め付けられるといった症状が出ます。
心筋梗塞は、さらに症状が悪化し、心臓に酸素を送る冠動脈が詰まり、心臓の筋肉細胞が死んでしまい機能が低下してしまう病気です。
弁膜症は、心臓にある弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態をいいます。心臓には、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁という四つの弁があります。
四つの弁のうち加齢や動脈硬化の進行によって不具合を生じやすいのは、僧帽弁と大動脈弁になります。特に多いのは、僧帽弁がしっかり閉じないために血液の逆流や漏れが生じる「僧帽弁閉鎖不全症」と大動脈弁がうまく開かず血液の流れが悪くなる「大動脈弁狭窄症」です。
大動脈疾患は、心臓から全身へ血液を送る太い血管に起こる病気です。特に心臓に近い部分に生じる胸部大動脈疾患には、主に、大動脈の一部分が拡張して瘤ができる「胸部大動脈瘤」と、突然大動脈が裂けて解離する「解離性大動脈瘤(急性大動脈解離)」があります。最近の高齢化に伴い、胸部大動脈疾患は増えています。
心臓外科手術治療方法について
狭心症・心筋梗塞の治療には、内科的な治療の「薬物治療」「心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術 PCI)」そして外科的な「バイパス手術」があります。
狭心症・心筋梗塞でバイパス手術の適応になるのは、心臓カテーテル治療を何回か受けても狭窄を繰り返す人、左主幹部(根本)に病変がある人、三枝病変(3本の血管に狭窄がある)の人です。
心臓カテーテル治療かバイパス手術を行うかは、例えば、冠動脈が狭くなっている部分が短く一カ所ならカテーテル治療、比較的若い患者さんで左主幹部に病変がある場合にはバイパス手術が進められるなど、病状や余病、患者の状態によって総合的に判断されます。
弁膜症の一つである僧帽弁閉鎖不全症には、弁の悪い部分を修復する「弁形成術」と、弁そのものを人工弁に取り替える「弁置換術」があります。弁形成術ができる病院は限られています。弁形成術で自分の弁を温存する最大のメリットは、弁置換術を受ければ一生服用しなければならない抗凝固薬を飲まなくて済むことです。
弁置換術を受ける場合でも、弁の種類には、生体弁と機械弁があります。機械弁は寿命は長いですが抗凝固薬を服用しなければならないのに対し、生体弁なら薬を飲まなくて済みます。ただし、生体弁は機械弁より寿命が短いため、若い人ならいずれ再手術を受けて弁を取り替えなければならない可能性があります。
大動脈疾患の治療は、病変部の血管をポリエステル繊維などでできた人工血管に置き換える治療が主流です。胸部大動脈瘤の多くは自覚症状はありません。最近では健康診断や人間ドッグのCT検査、エコー検査で見つかるケースが多くなっています。標準的には、腹部大動脈瘤で5センチ以上、胸部大動脈瘤で6センチ以上が手術の適応となります。
胸部大動脈疾患手術は、バイパス手術などと比べて死亡リスクが高く、下半身麻痺や脳梗塞といった合併症を起こす危険もある難易度の高い手術です。突然血管が裂ける解離性大動脈瘤については、自覚症状や前兆がない場合が多く、今のところ予防方法はありません。