乳がんについて

乳がんは、女性のがんの中で最も患者数が多いがんです。三十代から徐々に増え始め、患者のピークは五十代になります。乳がんが多い米国や英国では、すでに死亡率が減っていますが、日本では、死亡率も罹患率も増え続けています。

乳がん増加の背景にあるのは、日本人のライフスタイルや食生活の欧米化だろうといわれています。乳がんは女性ホルモンと密接に関係している病気です。食事、とくに動物性たんぱく質の摂りすぎは、乳がんだけでなくいろいろな病気で指摘されています。 ライフスタイルは大きく変わらないでしょうから、今後、日本の乳がんは増え続け、2015年には、乳がんにかかる人は年間5万人に到達するのではないかと予測されています。

乳がんは治療後も10年は経過観察を続ける必要があり、担当医や病院とは長い付き合いになりますので、担当医との信頼関係が非常に大事になります。また、乳がんの場合、患者向けの治療ガイドラインも市販されています。2011年6月からは、日本乳癌学会が、医師向けの新ガイドラインをウェブ上で公開する予定です。

乳がんの治療方法について

治療の大きな柱は、外科的な手術と内科的な化学療法(抗がん剤治療)になります。乳がんは全身病であり、腫瘍が小さくても、目に見えない微小転移が広がっている危険性があります。そのため、手術の前後には、リスクに応じて化学療法が行われるケースが多くなっています。

乳がんの標準治療は、腫瘍の大きさ、年齢、閉経前か否か、悪性度、ホルモン受容体の有無などによって細かく分類されています。特に治療法を選ぶうえで重要なのが、がん細胞のタイプを調べる「ホルモン感受性検査」と「HER-2(ハーツー)検査」です。

ホルモン感受性検査は、女性ホルモンとくっついてがん細胞を増殖する「ホルモン受容体」の有無を調べる検査です。陽性の人は、再発を防ぐためにホルモン療法を受ける必要があります。また、HER-2は、細胞の増殖を調節しているタンパクです。これが過剰に発現していると、がん細胞の増殖が促され再発・転移しやすいことになります。HER-2検査が陽性の人は、分子標的薬「トラスツズマブ」(ハーセプチン)の投与を受ければ、再発のリスクを低減できます。

切除手術に関しては縮小化が進んでいます。2010年4月には、センチネルリンパ節生検が保険適用になりました。腫瘍や乳房の大きさによりますが、乳房温存治療が主流になっているばかりか、センチネルリンパ節生検を行うことで、不必要なリンパ節切除は行わない方向になってきています。

センチネルリンパ節は、「見張りリンパ節」とも呼ばれ、手術中や手術前に、このリンパ節のみ切除して病理検査を行い転移が無ければ、その先のリンパ節にも転移がないことがわかっています。以前は脇の下のリンパ節は、全て切除されていましたので、腕がパンパンに腫れて上がらなくなる「リンパ浮腫」という後遺症に悩まされる患者が多かったのですが、不必要なリンパ節切除をなくし、後遺症を減らすために開発されたのが、センチネルリンパ節生検です。

最近では、遺伝子検査の進歩で、特定の遺伝子に変異があるために、乳がんと卵巣がんになりやすい人がいることがわかってきています。そういった遺伝子変異を持っている人は、乳房を残すと再発する恐れがありますので、乳房温存治療は避けたほうが良いと言えます。

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